古屋付き土地はお買い得なのか?

不動産サイトをみているとよく目にするワード「土地※現況古家あり」。一般的に古屋付き土地と言われるこの不動産は果たしてお買い得なのか?
今回は古屋付き土地について掘り下げていきたいと思います。

1.古屋付き土地とは?

古家付き土地とは、中古住宅として販売されている物件と異なり、経済的な価値がほぼない住宅が建つ土地を言います。 広告の分類では「土地」か「中古住宅」のいずれかになりますので、「土地※現況古家あり」として、古家がある「土地」として販売されているものが該当します。

ここで注目すべき点が、「経済的な価値がほぼない住宅」という言葉です。この言葉の意味を少し深堀っていきたいと思います。

2.建物の耐用年数とは?

建物の経済的な価値の意味を考えるにあたって知っておきたいのが、耐用年数という考え方です。ざっくりいうと対象となる建物をあと何年使うことができるかということなんですが、ここでもこの「使う」の意味をどうとらえるかによって耐用年数の考え方が変わってきます。

建物の耐用年数には大きく分けて3つの指標があります。それは法定耐用年数・物理的耐用年数・経済的耐用年数の3つです。以下でそれぞれの意味を簡単に解説していきます。

①法定耐用年数

法廷耐用年数とは、日本の税務上の規定に基づいて建物が減価償却(税金上で資産価値を減じること)される期間のことを指し、一般的に不動産の耐用年数というと、この法定耐用年数のことを指します。

といっても、不動産に馴染みのない方は何のことかわかりませんよね。

法定耐用年数を簡単に説明と、国税庁が定めた「この種類の資産の価値はこれくらいの期間でなくなると定めた期間」と言い換えるとができます。
建物の場合は、構造(なんの材料で主にできているか)と使用用途によって法定耐用年数が異なり、一般的な建物の法定耐用年数は次の通りです。

木造建築:22年
鉄筋コンクリート造:47年
軽量鉄骨造:19年
重量鉄骨造:34年

法定耐用年数は税務上の規定であるため、建物が実際に使用できる期間とは異なり、法定耐用年数を超えても建物は使用可能ですが、税務上では減価償却の対象として計上されなくなります。

②物理的耐用年数

物理的耐用年数は、建物が経年劣化や老朽化によって物理的に使用できなくなるまでの期間を指します。
その為、同じ築年数の建物でも、使用状況、メンテナンス実施の有無、周囲の環境によって耐用年数が変わってきます。その為、法定耐用年数のように明確な判断基準は存在せず、都度適当なメンテナンスを実施することによって耐用年数を延長することが可能です。
一般的に建物を使用することができる期間というのは、この物理的耐用年数を意味しています。

③経済的耐用年数

経済的耐用年数は、建物が経済的に価値があるとされる期間を指し、具体的には、建物を投資や事業に利用して収益を上げることができる期間のことを意味します。
一般的には建物が古くなることで投資や事業に利用して収益を上げることが難しくなり、加えてメンテナンスのための費用が増えるため、建物の築年数に応じて経済的耐用年数が減っていくことになります。
一方、自宅として使用している建物の場合は解釈が難しいのですが、建物のメンテナンスにかかる費用が同条件の建物を借りる場合の家賃と比較して下回っていれあば収益を上げることができている、と考えてもいいかもしれませんね。

経済的耐用年数は、不動産の市場価値や周囲の経済状況などによっても変動するため、計測には複数の判断基準と専門知識が必要になります。経済的価値がどの程度あるかは不動産鑑定士や不動産仲介会社によって査定され、決まった評価制度があるわけではありません。主に不動産を売り買いするときに登場する指標となります。

上記3つの耐用年数をまとめると以下の通りになります。

ポイント
  • 法定耐用年数:法律で定められた税制上の耐用期間
  • 物理的耐用年数:建物を物理的に利用できる期間
  • 経済的耐用年数:建物を利用することで経済的価値を得ることができる期間

では、ここで冒頭の問い「経済的な価値がほぼない住宅とは?」を改めて考えてみましょう。

3.経済的な価値がほぼない住宅とは?

実はこの経済的な価値がほぼない住宅の定義はともてあいまいで、明確な基準があるわけではありません。
古い家を中古住宅として売るのか、古屋付き土地にするのかはあくまで売り主の自由で、住宅の魅力をアピールするなら中古住宅として、土地をメインに売り込むなら古家付き土地として売り出すことになります。
とはいっても全く何の基準もないというわけではなく、先述した3つの耐用年数の内、主に①法定耐用年数を超えているかどうか、が一つの判断基準となっているようです。
木造建築だと22年(実際には築30年以降の建物が多いような感覚ですが)以降の建物は古屋付き土地として売りに出されるケースが多いように思います。
ここで重要なことは、経済的な価値がほぼないとされている建物は、必ずしも物理的、経済的に利用することができない建物とイコールではない、ということです。

4.古屋付き土地はお買い得なのか?

先に述べたように、建物にはいくつかの耐用年数(=指標)があり、古屋付き土地がお買い得かどうかはどの指標を基に判断するかによって変わります。
例えば自宅として購入する場合、古屋が物理的耐用年数を超えているかどうかが重要な指標となります。
修繕することでまだ利用することができるのであれば、建物を新築するよりはお得に自宅を入手することができる一方、物理的耐用年数を超えていなくても、改修費用が新築住宅を建てる費用を超えるもしくは同額程度であればその建物を使うメリットは少ないでしょう。
また、古屋を事業用に利用する場合は、経済的耐用年数を超えているかどうかが購入の指標となります。
建物が古くても、メンテナンスにかかる費用以上にその建物からの収益を得ることができるのであれば投資としてはアリというケースもあると思います。
ただし、事業用に利用する場合は経済的耐用年数以外にも、いくらの投資でいくらの利益が得られるかという「利回り」や想定する事業期間、予想される後々のメンテナンスリスクなど、複数の指標によって判断され、建物はまだ使えるけど、壊して建て替えたほうが多くの利益を得ることができる、という理由で建て替えとなっているケースも多いようです。

5.まとめ

ここまでお伝えしてきた通り、建物の評価には複数の指標があります。
その建物を何に使いたいのか、その目的によって同じ建物でもお買い得か、そうではないのかが変わります。
また、当然ですが建物の状態によってもその評価は大きく変わります。その建物が現状どういった状況なのかはぱっと見でわからないことも多く、調査には専門家の助けが必要です。最近では建物調査を専門で行う調査士によるホームインスペクション(建物状態調査)を行う機関も増えており、また地域によってはインスペクションに対して市や県から補助金が支給される場合もあります。

古屋付き土地は多くの場合、建物価格を0円と判断し土地のみの値段で売りに出されています。
また、場合によっては建物の解体費用分土地相場の値段より安く価格が設定されていることもあり、もし建物を大きな費用をかけずに修繕、利用することができるのであればお得な買い物となるケースも多いように思います。

インスペクション等の調査を行い、建物の現状を正確に把握し、使用目的に応じて適切な修繕を行う。

上記の手順をしっかりと踏むことで、古屋付き土地は「土地の値段で建物と土地を手に入れることができる」お買い得物件になる可能性を秘めています。
不動産の購入を検討されている方は、古屋付き土地も検討の候補に入れてみてはいかがでしょうか。

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いとう

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